地極産業‐核石通販 > 関連御論文 > 神文学ABC「窮極の恋愛について」
聖品の創始者に伺う、恋愛を超えた恋愛の姿──
インタビュー・シリーズ「窮極の恋愛について」
──今日は「窮極の恋愛」についてお聞きしたいと思って参りました。
伯壬旭軍帥(以下、帥) “窮極の恋愛”?!さあて、そんなものが存在するのかねえ、そんなものを定義するのは道学者流だけだろ。恋愛には諸相があり、人々(ニンニン)自分が思い描く窮極の恋愛は異なる。そんな定義はやりたくないねえ。
──そこを何とか。軍帥の恋愛観みたいなもので結構ですから。
帥 僕の恋愛観? 僕の感覚は一般的とは云い難いよ。
──それで結構です。
帥 それなら何か話すか。
──お願いします。
帥 僕は女好きだが同時に女に無執着だ。
──はあ、分るような気もしますが、分らない気もします。
帥 君には分らない。
──すみません。しかしそれが軍帥が女性におもてになる秘密なのか、と思います。
帥 “モテル、モテナイ関係ない”心境のことだと言い換えることもできる。僕は若い頃女性に全くモテなかった。友達が女の子の話を皆でしているのを聞いていて“俺は全くモテない”と言ったらモテモテ男が“オ、俺もモテないよ”と慌ててモテナイ男に変身した。“僕がモテない”と断定したのでモテる奴が恥入ったらしい。
──モテる、モテないなんてことは軍帥はお若い時から超越していらっしゃったのですね。
帥 確かに超越といえば超越していたのだろうね。モテるからといって男の値打ちが上るわけでなし、モテないからといって男の値打ちが下るわけじゃなし。いいも悪いも天上天下唯我独尊居士(テンジョウテンゲユイガドクソンコジ)だったね、僕は。
──軍帥の初恋はお幾つの時ですか。
帥 大学2年と3年のちょうど間の春休みに一目惚れした女の子がいた。旅先で見つけた。バスの車掌をしていた。16才の子だった。
──どうされたのですか。
帥 彼女は仕事中なので流石に口説くわけにはいかない。それで貼ってある名前を記憶した。当時のバスは運転手と車掌の名札がかかっていた。それで帰ってからバス会社宛にラブレターを書いた。
──さっきのお話と随分違いますね。軍帥はモテル、モテナイ関係ないんじゃなかったのですか。
帥 随分どころか全然違う。郵便屋がいつ来るかいつ来るかと毎日七、八回はポストを覗きに行った。来るまでに百回は覗いている。
──ハハハ、それで何て書いてありました?
帥 最初のラブレターの中で箔をつけるため東京大学の学生です、って書いたものだから学歴の差を心配するようなことが書いてあった。向こうは中学出だったから。そんなこと気にするなって書いて返事出した。好きだ好きだ、一目惚れだ!ってね。
──随分焦っておられましたね。
帥 焦ってたといえば焦ってたが、ギンギンに張切っていたという方が近いね。毎日毎日ラブレターを書き続けた。
──向こうの方からも毎日あったのですか。
帥 一週間に一回ぐらいだった。
──ずい分冷たいんですね。
帥 冷たいどころか僕のハートは火山のように燃えていた。相手が冷たいかどうかなんて知ったことじゃない。
──知ったことじゃないんですか。
帥 知ったことじゃない、会いたい会いたいって毎日書き送った。
──で会って下さったのですか。
帥 会ってくれるまでひと月ぐらいかかった。遂に約束して女の子の寮がある下田に走った。
──走ったのですか。
帥 朝夜が明けぬ真っ暗な道をリュックを背負って走った。警官に誰何(スイカ)された。泥棒と間違われてリュックの中味を査べられた。
──ハハ、暗闇の中を走られたって、列車に間に合いそうもなかったのですか。
帥 十分過ぎる程の時間があった。下田に着いて二時間ぐらいは待った。
──ハハ、随分焦られたのですね。
帥 焦った。
──でお会いになって首尾はどうだったのですか。
帥 チグハグだった。
──チグハグとは?
帥 お互い若くてギコチなかった。問題は話が合わないということだった。話といっても僕が一方的に話題をみつけて話すのだがその子は終始無言で合槌も打たなければ質問もしなかった。ずっと虚空を見ていた。ポニーテールの可愛(キュート)くてクールな横顔を今でも覚えている。余りの無言に僕が“君も何か云えよ”と云ったら眼がピカッと光ったが、そのまま虚空を見続けていた。一回目のデートはこんなまま終った。
──その後どうなったんです?
帥 一回目はうまく行かなかったが全くひるまなかった。不思議な雰囲気にますます惹かれた。今考えれば『攻殻機動隊(コウカクキドウタイ)』の草薙素子(クサナギモトコ)の雰囲気に酷似していた。たまに僕の顔を見る時は涼し気な眼で瞬きもせず僕の眼を射るようにみつめた。笑顔は全く見せなかった。僕は“この人の愛が欲しい!”と思った。
──軍帥がですか!
帥 僕にも青春時代はある。
──そりゃそうです。で、その後もおつき合いされたのですか。
帥 相変らず毎日ラブレターを書き続けた。向こうの返事も相変らず一週間に一回だった。
──向こうの方のお手紙にはどんな内容が書かれていたのですか。
帥 二人の間に横たわる深い谷のことが書かれていた。それは僕も感じていた。それでも僕は愛の告白を続け、その後も三ヶ月に一回ぐらい会い続けた。情況は変らなかった。そんなまま僕は大学を卒業し就職した。就職した後も三ヶ月に一回ぐらい会いに行った。
──なぜ三ヶ月に一回なのですか。
帥 僕はもっと会いたかったのだが向こうが会ってくれなかった。
── どういう所でお会いになったのですか。
帥 山歩きに行くことが多かった。山歩きをしていればそんなに会話をしなくて済むこともあった。もちろん僕が山好きなことがあるがね。昼間は向こうが休みをとれず夜、下田港を見下ろす山の公園でベンチに三時間ぐらいずっと二人で黙って坐っていたこともある。
──相変らずチグハグな雰囲気だったのですか。
帥 心は通い合っていながら二人の間には深い谷があった。あとから考えれば二人の運命の間に切れこんだ谷だった。
そんなこんなしているうちに僕は自分の天命に気付き一年ちょっとで会社を辞めた。もちろん彼女に相談せずに決めた。僕が自分の進路を誰かに相談したことは生れてから一度もない。だが僕の行動によって僕の目指すものがいよいよ彼女は分らなくなったようだ。僕は自分が何をしようとしているか誰にも語らなかった。間もなく彼女から“おつき合いをやめましょう。貴方という人がいよいよ分らなくなりました”と手紙で云って来た。僕は思った。二人の運命は全く違うところに向っているのだ、と。僕は自分の天命をどう展開するのか全く分らず、深い深い霧の中にいた。彼女を僕の運命の中にひきずりこむことはできない、と思った。そして別れた。以来僕は研究と坐禅の鬼と化した。以後二十年間僕は女性のことをすっかり忘れた。町を歩いている時も女性を女性として見たことは文字通り一回もない。 “小島(※軍帥の戸籍姓)は叡山に入った”“いやインドに行っている”“いやチベットに行っているようだ”と学生時代の友人が勝手に噂していたのを後年知った。 精神病院に入っている、という噂まであったようだ。たしかに、バスに乗ってたまたまミラーに映った自分の顔を見た時狂人の眼をしていた。
──伊豆の方のことを思い出されることはなかったのですか。
帥 時々面影がフッと浮ぶことはあった。別れて何年経っても愛情は変らなかった。だんだん薄れていくこともなかった。
──今もですか。
帥 『窮極の恋愛とは』という表題を出されて喋りだしたらこの人のことになった。今も変らないのかもしれない。
──軍帥! 軍帥の初恋こそ窮極の恋愛だと思います!
帥 そうか。とすれば此岸(シガン)と彼岸(ヒガン)、正世界と反世界を股にかけた恋愛が窮極の恋愛なのだな。彼女は今も彼岸の中に在り、心は通じ合っているのだろう。此岸と彼岸は「時間の穴」を通して繋がっている。恋愛に限らず、人と人同士繋がりの窮極のかたちが此岸と彼岸、正世界と反世界を不二一体のものとして自在に交流する繋がり、言ってみれば竜同士の繋がりなのだ。そこには始まりも終りもない永遠の繋がりがある。本当の存在も本当の関係も全ては「不生(フショウ)」だ。
──以前にも「不生」ということを仰言(オッシャイ)いましたが、不生というものがどういうことか、よく分らないのですが。
帥 江戸初期の盤珪禅師(バンケイゼンシ)が宇宙の本質を喝破(カッパ)した、それが「不生」だ。生まれたものなら死ぬ、無くなる。が、生まれ不(ザ)るもの、生まれたものではないものは死ぬこともない、無くなることもない。たとえば愛情が或る時生まれたものであれば必ずそれはいつか消える。生まれた愛情を永遠に留めておくことは不可能だ。生あるものには死がある。生まれないものには死もない。それなのに人は生まれたものでしかない愛情を永遠に留めたいと思う。ここから悩みが発する。生まれた愛情なら消えるに決っている。
──生まれたものではない愛情、とはどういうものなのでしょうか。
帥 死は正世界しか認識できない者にのみ存在する。正世界から見ての死は反世界では生だ。譬(タト)え愛する者が死んでもその人は反世界の中に存在する。この世にありながら反世界に自在に出没することができる者にとって愛する人と反世界でいつも会うことができる。別に相手が死ぬ必要はない。相手とこの世で別れたとしても、本当に愛する人は常に反世界で繋がっている。私はその少女と別れたが反世界では別れていない。生まれた愛情ではないから消えるはずがない。その少女と今もずっと繋がっているのだ。
── 本当に相手に嫌われてしまったり、飽きられてしまったりして去った相手とはどうなるんでしょうか。
帥 そんな愛情は生まれた愛情なのだから消えて当たり前さ。そんな相手にいつまでもこだわるとしたら当人が宇宙の本質など毛ほども分らぬつまらぬ人なのだから、相手に飽きられて当然だ。顔を洗って出直してこい、と言いたいね。僕はそんなつまらぬ女性を好きになることはないね。
──軍帥が本当に愛されたのはその方だけなのですか。
帥 好きな人はいっぱいいるよ。その少女の次に、二十余年のブランクの後に、好きになったのが女帥(伯緑姫女帥(ハクリョクヒ ジョスイ))だ。女帥も一目惚れだった。
──女帥との出会いはどんな風だったのですか。
帥 僕が書いた本を読んで会いに来てくれた。バスを降りたが家が分らない、と電話して来たので“そこで待ってろ、迎えに行く”と云って下駄をつっかけて出た。バス停の前の女性がこっちを向いてニコッと微笑った。その笑顔で一瞬にして好きになった。
── 素敵ですね! 軍帥は一目惚れでしか好きにはなられないのですか。
帥 そんなことはない。好きになる日付が重要のようだ。ホロスコープが誕生の瞬間に形成されるようにね。大事な人と初めて会ってもその日付がよくない時は―といっても後で査べて初めて分ることだが―僕の眼はその人を見ても見えないようだ。後日フッとその人を注視する日が来る。その日は良い日付の日になっている。
── その日付けによって愛情が生まれるとすれば、愛情は生まれたと云えるのではないのですか。
帥 いや、不生の愛情を認識し易い日付に僕の眼がその人を見るということだろうね。
──なるほど、そうなんですか。話は別ですが、肉体関係と愛情の関係はどうなのでしょうか。
帥 肉体関係と愛情は関係があるが肉体関係が無ければ愛情がない、とは全く云えない。僕と最初の少女の関係は全くプラトニックだ。
──そうなんですか。
帥 僕は『攻殻機動隊』の草薙素子が好きだが肉体関係はない。
── そりゃそうですよね。
帥 そりゃそうですよね、とは単純に言うことはできないよ。
── ???……
帥 確かに正世界ではアニメの主人公と肉体関係を持つことは不可能だが、草薙素子は元来反世界の存在だ。僕が反世界で素子と関係を持っていない、とは断定できない。僕は夢を見ない。睡眠中僕は反世界にいるのだと思う。だが反世界での出来事は「時間の穴」を通ってこっちの世界に復元することはできない。睡眠中の僕の出来事は完全なブラック・ボックスの中だ。それが”夢を見ない“という言葉の中味だ。皆さんが夢を見るのは睡眠中反世界に行ってないことの証だ。鉄(クロガネ)さん(鉄つるぎ軍代(グンダイ))の夢は例外だが。他の所でも述べたことがあるが、鉄さんは不思議少女だ。鉄さんはその出来事が起る何年も前にその出来事を夢の中で見ている。彼女は僕という存在を知るずっと前に、たとえば作戦の夢を見ている。僕がその作戦を考えつくずっと前にだ。だが彼女はその夢を翌朝思い出すことはない。その夢を思い出すのはその事が起った日だ。作戦だけではない。『攻殻機動隊』は彼女の夢がつくり出した作品なのだ。彼女が何年も前に見た夢が現実化する。彼女は未来波動を確定してしまう力を持っている。未来を外から見ているわけではない。未来の中でする彼女自身の体験がその未来を現実化してしまうのだ。
── 凄い特殊能力ですね!
帥 凄い。電脳とは反世界に通ずる脳のことなのだ。
話を肉体関係と愛情の問題に戻そう。正世界での肉体関係が無くなっても愛情は持続することはよくある。僕の場合は殆どがそうだ。僕は正世界と反世界を不二一体のものとして認識しているだけでなく、両世界を自在に往来しているからだ。カエサルの女性好きは殆ど伝説になっている。彼の愛人は何人いたか分らぬほどだ。だがカエサルと関係のあった女性でカエサルを恨んだ女性は一人もいない、と云われている。なぜか、カエサルはこの世で肉体関係が無くなってもその女性とは反世界で交流していたからだ。真の愛情があれば相手が死のうが生きようが、肉体関係があろうが無かろうが、相手との交流は断たれない。それが「不生」ということだ。
──軍帥から見れば愛情問題でくよくよしたり嫉妬したり、恨んだりする者はバカに見えるでしょうね。
帥 バカとは言わないが、底の浅い人だとは思う。
──底の浅いとは正世界的な感覚しかないということですか。
帥 そういうことだ。五感などは存在が持っている能力のほんの一部でしかないのだからな。
── 軍帥は最近とみに竜に言及されています。人間社会から竜帝國へ世界は移行するとも言われています。竜同士の男女関係とはどういうものなのでしょうか。
帥 竜はサイボーグだから人間同士の生身(ナマミ)の愛情関係からトータルな関係に変る。同志であり戦友であり男女関係でもある関係に。竜はベタベタしたものは大嫌いだ。竜の天敵は蛇で蛇は何となくべたべたしている。男女関係もスカッとしたものに変る。
── カエサルは多くの女性を愛し、その女性たちからも愛された、ということですが、同時に何人もの女性を相手にできるコツは何なのでしょうか。
帥 その女性とつきあっている時、他の女性のことを思い出したり、他の女性と比較したりすることが全くないことだろうね。その女性を値踏みすることがないということだ。その女性をそのまま愛するということだ。女性たちはカエサルと会っている時はそのままの自分でいられたのだ。心が解放されたのだ。
──なるほど、よく分ります。女は他の女性と比較されることに凄く敏感ですから。
帥 女性も相手の男を他の男と比べることはやめた方がいいね。男は女ほど敏感ではないが、比較されていい気持はしないと思うよ。
──そうですね。気をつけます。
ZX暦四五七六日十三年七月十二日
(旧二○○六年九月二十五日)
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